必要とされたくて 「ふっ!はぁっ!やぁぁあっ!!」  裂帛の気合と共に、薙刀が銀線を描きながら宙を切り裂く。 「いぃゃやあああああっ!!」  大気すら断ち切るような強烈な斬撃を繰り出して、一度動きを止める。 「まだ……です。これくらいでは……まだ、足りませんっ!」  肩で荒い息を吐きながら、再び薙刀を虚空に向けて振るう。  とっこーちゃんは、朝早くからかれこれ半日以上一人で薙刀を振っていた。 「ふんっ!はぁっ!ぃぃぃいいやぁぁぁぁぁあっ!!!」  彼女が薙刀を振るうたび、汗が飛び散り煌く。  まるで舞のように華麗に、そして鬼気迫るほどに苛烈に、ただ一心不乱に薙刀を振り続けている。  それは、恐ろしいほどの集中力を感じさせながら、同時に没頭することで何かから目を逸らしているような逃避にも見えた。 「はあっ!やああっ!はあああっ!!」  薙ぎ払い、切り替えし、突き……めまぐるしく変化させながら、刃は宙を舞い続け…… 「……っ!?」  一際大きく放った袈裟懸けの斬撃が、その勢いを支え切れずに宙を泳いだ。あまりに長時間にわたる訓練のせいで、薙刀を持つ彼女 の腕も限界に来ていたのだ。 「くっ!」  反射的に崩れたバランスを強引に立て直そうとして、左足を前に突き出して踏み込む。が、疲れ切った体で行うには少々無謀な行為 だった。 「――っ!」  左足が引き攣るような感覚と激痛。疲れのためか、突き出した前足は中途半端にしか体を支えきれず、足首を捻挫したのだ。  その場に崩れ落ちそうになるが、とっこーちゃんは捻挫した左足で無理矢理踏ん張って耐えた。 「ぅあっ……まだ、これくらいの、ことで……」  顔を歪めて歯を食いしばり、強引に激痛を無視する。 (戦場では……足を痛めたからといって、休ませてはもらえません!) 「くぅっ……ぃやあああっ!!」  再び裂帛の気合を発して薙刀を振り始める。何度も何度も激しい痛みを訴える左足を無視しながら。  その日、とっこーちゃんの訓練は結局日が暮れるまで続いた。  そして翌朝。 (…まだ…足りません。今日も、いえ、明日も明後日も、もっともっと精進し続けなければ…)  とっこーちゃんは昨日挫いた左足の痛みも癒えぬまま、いつものように訓練に向かおうとしていた。  彼女はここ数日間、ずっとこのような、あまりに厳しすぎる訓練を行っていた。朝食を済ませた後、簡単に準備して館を出て少し離 れた所にある平地に向かう。そこで只管薙刀を振り続け、それが終ったら近くの川で汗を流し何食わぬ顔で館に戻る。  彼女はこの訓練のことを誰にも――主であるレオにも話していなかったし、悟られぬように十分に気を遣っていた。疲労している姿 を見せて心配させては申し訳ないと考えていたし、何よりもこの訓練を止められたくなかったからだ。  だから、彼女が一人で訓練していることは誰にも知られて居なかった。――否、知られていない筈だった。  館のホールで、まるでとっこーちゃんが来るのを待ち構えていたかのように佇んでいた者を見るまでは。 「おはよ。とっこーちゃん」  広いホールの扉のすぐ脇で、白衣を着た女性――はりまおーは、揶揄するように手の平をパタパタ振って挨拶した。 「…お…おはようございます」  とっこーちゃんは慌てて居住まいを正し、頭を下げて挨拶に応じる。下げながら、なぜはりまおーがこんな所にいるのかを考えてい た。 「そんなに固くならなくったっていーわよ。…まぁ、あんたじゃ仕方ないか」  可笑しそうに苦笑をもらすはりまおー。相変わらず掴み所の無い飄々とした口調と態度に、とっこーちゃんは困惑の表情を浮かべる。  正直な話、とっこーちゃんははりまーのことが少し苦手だった。真面目なとっこーちゃんには彼女の少々度の過ぎたセクハラ発言が 受け入れ難いということもあるのだが、それ以上に、彼女の妙に余裕のある態度を前にすると、まるで何もかも見透かされているよう な感じがして落ち着かない気分になるからだ。 「そうですか…申し訳ありません。その、これは私の性分と言いますか……」 「ああ、いーわよ。別に責めてなんか居ないから」  やはり飄々とした態度でパタパタと手を振り、それからいまだに困惑の表情を浮かべているとっこーちゃんにズバリと切り出した。 「左足…痛めてるでしょ?」 「…っ?!…い、いえ、そのようなことは…」  不意に図星を突かれて、思い切り動揺してしまうとっこーちゃん。その素直すぎる反応に、はりまおーは可笑しそうに笑みを浮かべ る。 「あんたのそーゆーとこ、かわいくて結構好きなんだけどねー」 「なっ!お戯れを…!」  思わずとっこーちゃんは顔を赤くして声を荒げようとして、 「でもね、それとこれとは話が別。今日は止めときなさい」  不意に真面目な表情になったはりまおーの言葉に、息を飲んだ。 「…な、なんのことでしょうか?私には、はりまおーが何を言っているのか…」  しばしの逡巡の後、思い切り裏返った声で言い訳しようとするとっこーちゃんを、はりまおーが再びやんわりと遮る。 「似合わない嘘なんて付かなくていいわよ。してたんでしょ?特訓」 「……い、いえ……本当に私は左足を痛めなどいませんから」  それでも、とっこーちゃんは否定する。彼女は嘘は嫌いだが…何よりも、この訓練を止めるわけにはいかなかったからだ。もし止め たら…自分は不安に押しつぶされてしまう。それは、今の彼女にとって何にも勝る恐怖だった。  頑なな態度に、はりまおーは呆れたように嘆息する。 「ふぅ…強情ねぇ」 「本当に大丈夫ですので。それでは、私はこれで失礼します」  これ以上話を続けてボロを出す前に立ち去った方がいいと判断したのだろう。とっこーちゃんは一方的にそう告げてはりまおーの脇 を通り抜けようとした。 「そう?ならいいけど」  はりまおーは相変わらず余裕の表情で、通り過ぎたとっこーちゃんを見送…らなかった。 「えいっ♪」  自分の傍を通り抜けたとっこーちゃんの背後から、首の付け根辺りの位置を狙って手にしている長大な針で突く。とっこーちゃんは 「えっ?」と思う間もなくチクッとした痛みを感じた後、いきなり全身の力が抜けてその場にへたり込んだ。 「え?何が…?」  戸惑うとっこーちゃんに、はりまおーは可笑しそうにクスッと微笑んだ。 「今突いたのは弛緩のつぼって言ってね、ここを突かれると、まるでイっちゃった後のように全身に力が入らなくなっちゃうのよ。あ、 いい子はこれを使って悪戯しようなんて考えちゃだめよ」  最後の台詞は一体誰に言っているのだろうか?とにかく、実に楽しそうに解説してから、床にへたり込んでいるとっこーちゃんの体 を片手で脇に抱えて持ち上げた。 「ひゃっ……は、はりまおー?何を…」 「んー?とりあえず、医者の言うこと聞かない悪い子を強制連行するだけ。あ、お姫様だっこは駄目よ。それはまた今度本物の王子様 にしてもらいないさい」 「お、王子様なんて……ではありません!その、恥ずかしいから放して下さい。このようなはしたない格好で…」  王子様の言葉で一瞬赤くなったが、慌てて我に返って抗議するとっこーちゃん。口はこれだけ動くのに、全身は冗談みたいにまるで 力が入らない。 「聞こえなーい、聞こえなーい」 「はりまおーっ!」  はりまおーは鼻歌まで歌いながら、とっこーちゃんの抗議を無視して脇に抱えたまま運んでいった。  はりまおーはそのまま自分の部屋までとっこーちゃんを連れて行き、まだ体の自由が利かない彼女を強引に椅子に座らせた。 「……んん?」  袴の裾を捲り、痛めている左足を診て眉を顰める。とっこーちゃんの足首は見て分かる程度に赤く腫れていた。 「ん〜、ちょっといい?て言うかいいわね」 「…?何を…ひゃっ」  それからはりまおーは一旦左足を診るのを止め、とっこーちゃんの肩や二の腕を揉み始めた。 「や、止めてくだ…ひゃっ」  どうにもくすぐったくて声を上げるとっこーちゃんを無視して一頻り触診した後、からかうように口元を歪めて言った。 「ん〜、すべすべしてて、柔らかくって、適度に張りが合っていい肌ね〜。やっぱり女の子ね」 「なっ…そ、そんなことを確認するためにあんなことをしたんですか!?」  カァッと顔を紅潮させて声を荒げるとっこーちゃんに、はりまおーは平然と切り返す。 「もちろん違うわよ。まったく、相当疲労が溜まってるみたいね。一体どれだけ無茶したのかしら」 「………」 「な〜んて、それくらい別に触診しなくても分かってたんだけどね〜」 「はぁ……まったく、あなたと言うお方は……」  ケラケラ笑うはりまおーに、とっこーちゃんも諦めたように苦笑した。どの道、はりまおーと言い争ったところで彼女に勝ち目は無 い。いくらなんでも役者が違いすぎる。 「で、なんでそんな無茶なんてしたの?何か悩みがあるならオネーサンに言ってごらんなさい」  向かいの椅子に腰を下ろし、砕けた様子で話し掛けるはりまおー。とっこーちゃんを気遣っているのか、その笑顔はいつになく優し い。しかし、とっこーちゃんはその笑顔から逃げるように、眼を逸らして俯いてしまう。 「それは……」  何か言い掛けたが、それ以降続けられる口を噤んで黙り込んでしまった。  はりまおーはしばらく言葉の続きを待っていたが、やがて「頑固なんだから」と苦笑を浮かべて、自分から切り出した。 「ぼーや…レオのことでしょ?」 「…………」  とっこーちゃんは答えない。しかし、一瞬震えた肩がはりまおーの言葉を肯定していた。 「無理も無いことだけどね…」  はりまおーは呟いて嘆息する。それは、現在彼女も多少は気に掛けている問題だったからだ。  レオは最近、眼に見えて元気が無い。いや、無論皆の前ではいつも通りに振舞おうとしているが、消沈しているのは隠しきれておら ず返って痛々しいくらいだ。  そして、レオの元気が無い原因も分かっていた。十日ほど前に、レオの従魔のやもりんが武者修行の旅に出て行ってしまったことだ。 レオも納得してやもりんを送り出したと聞いているが、その日からずっとレオはこんな調子だ。 「ま、心配なのは分かるけど、そんなに気にしなくてたっていいわよ。ぼーやはそんなに弱くはないわよ」  はりまおーは柔らかい口調で諭すように言う。無論、彼女とて早く元気になって欲しいとは思っているが、こういうのは時間が解決 してくれると割り切っている。それに、はりまおーが放って置いても、バニラのようにじっとしていられない従魔が頻りにレオを連れ 出したりして元気付けようとしている。実際、やもりんが居なくなった当初の頃に比べると、レオはずっと自然に笑えるようになって いた。完全に立ち直るのももう時間の問題だろう。  しかし、とっこーちゃんは俯いたまま小さく首を振った。 「……違うんです」 「え?」  その搾り出すような言葉に、はりまおーが意外そうな声を出す。  とっこーちゃんは尚も躊躇っていたようだが、黙って自分を見つめるはりまおーの視線に耐え切れず、やがて訥々と語り始めた。 「……最初は、確かにレオ様が心配なだけでした。やもりんが居なくなってから溜息が増えて……それでも私達の前では気丈に振舞っ ている。その姿が痛々しくて、何か、私にできることはないかと、必死で考えました」  俯いたまま、何かに耐えるように膝に置いた手をギュッと握り締める。 「…そんなことを考えている内に、ふと、思ってしまったんです」  泣きそうに顔を歪め、手の平に爪が食い込むくらいにさらに強く手を握りめる。  それは彼女にとって、絶対に考えてはいけない疑問。自らの主に対する、背信行為に近しい思い。 「……レオ様は、もし、私が居なくなっても、かように落ち込んで下さるのかと……そんなことを、考えてしまったんです」  自責の念を込めて、搾り出すような悲痛な声で。 「自らの主を疑うなど……私は、従魔失格です…っ!」  それ切り、黙り込んでしまったとっこーちゃんを、はりまおーは優しい目で見つめていた。 (まったく……相変わらず、真面目すぎるんだから)  悩んでいるとっこーちゃんには悪いが、どこか微笑ましい気分でそんなことを思う。  とっこーちゃんの悩みは全然悪いことではない。大切な人にもっと好きになってもらいたい、もっと必要とされたい、そう思うのは ごく当然のことだ。自己に対する厳しさが、それを自らの弱さと判断してしまうだけ、ただそれだけのことだ。  ただそれだけのことが、真面目すぎる彼女には許せなくて、どうにかしたくて、それで今回のような無茶な訓練をするようになった のだろう。恐らく、彼女自身もそれでどうにかできるとは本気で思ってはいなかっただろうが、それでも、せずにはいられなかったの だ。  そこまで思い詰めてしまうのは、偏にレオへの想いの深さ故――その一途さが、はりまおーには可愛く見えて…少し、眩しかった。 「ねぇ、とっこーちゃん」 「……何で……ひゃうっ!」 「んーっ、本当に可愛いんだからっ」  とっこーちゃんが「何でしょうか」と返事する暇も無く、はりまおーは唐突に彼女の首に抱きついて、そのままぐりぐりと頬擦りし た。 「わ、や、止めて下さい!はりまおー!」 「んー、気持ち良いー」 「ひゃあっ!は、はりまおーっ!!いい加減にっ……え……」  なんだかはりまおーがヤバそうな所まで手を伸ばしてきたので、更に語気を強めて必死で抵抗しようとし……たところで、すっとは りまおーの方から離れた。 「じゃ、私はちょっと用事があって出るから、あんたはここで大人しくしてなさいよ」 「…はぁ…」  急に普段の調子に戻ったはりまおーに付いていけず、生返事するとっこーちゃん。その様子にはりまおーはくっすと笑みを漏らして から部屋のドアまで向かい、そこで思い出しように「そうそう」と振り返った。 「もうあんたの麻痺はとっくに治ってるけど、黙って出て行っちゃダメよ?もし勝手に居なくなってたら…今度はもっと凄いことしち ゃうから♪」 「もっと凄いことって…」 「じゃあね〜」  聞き返す間を与えずにはりまおーはさっさと出て行ってしまう。とっこーちゃんは慌てて「はりまおー!」と呼び止めたが、間に合 わなかった。それから顔色を曇らせて、はりまおーの残していった台詞を思い出す。 (も、もっと凄いことって…一体何をなさるおつもりですか!?)  何を想像したのか若干顔を赤くしたとっこーちゃんは、もう動けるにも関わらずそのまま椅子の上で固まっていた。  それから10分程経過して。 (…一体、いつまで、ここでじっとしていればいいんでしょうか?)  あれからずっと固まっていたとっこーちゃんは、この放置された状況にさすがに落ち着かなくなってきていた。ここ最近は時間さえ あれば薙刀を振っていたから特にだ。こんな風に空いた時間があると落ち着かない気持ちになってくる。 (はりまおーには悪いですが、ここはやはり訓練を……いえ、でもそんなことをしたら何をされるか……いや、しかし……)  悩みながら一人で赤くなったり顔を顰めたりしている様子は中々に可愛らしい。そんな風にとっこーちゃんが一人百面相していると、 いきなりドアが開いて誰かが部屋に駆け込んできた。 「とっこーちゃん、無事っ?!」 「レ、レオ様!?」  いきなりのレオの登場に、とっこーちゃんは思わず驚きの声を上げてしまう。レオはそのままとっこーちゃんの傍までやってきて、 焦った様子で捲し立てた。 「とっこーちゃん、寝てなくて平気なの!?はりまおーから大怪我したって聞いたんだけど。あ!もしかして背中を…」 「ど、どうか落ち着いてくださいレオ様!大怪我などと言う大げさなものではありません、ただの捻挫です!」 「そっか、ただの捻挫……え?捻挫?」 「…っ!」  とっこーちゃんはしまった言う風に口を噤んだ。レオがあまりに焦っていたから、つい口が滑ってしまったのだ。レオとてモンスタ ー使いだ。人間よりも遥かに頑丈な身体を持つ戦闘系の女の子モンスターが、捻挫をしたと言うことの意味くらい、十分に理解できる。 つまり、そんなミスをしてしまうほど、相当の無茶をしたと言うことだ。 (はりまおーの仕業ですね……)  内心で臍を噛むも、言ってしまった後ではどうしようもない。レオは状況を理解して落ち着いたようだが、代わりにいつになく真面 目な顔で心配そうにとっこーちゃんの顔を覗き込んでいる。その真剣な目に、とっこーちゃんの心臓がドキリと跳ね上がった。 「とっこーちゃん。どうして捻挫なんてしたのか、教えてくれる?」 「いえ……それは……その……」  もうほとんどバレていることを悟りつつ、それでもつい口篭って視線を逸らしてしまう。そんなとっこーちゃんに、レオは優しく語 り掛ける。 「…最近、とっこーちゃんが無理していることには気付いていたんだ。一度それとなく探って見たんだけど、何でも無いって言われて 、それで黙ってたんだけど…」  その言葉に、とっこーちゃんは驚いた。まさか気付かれているとは思っていなかった。そう言えば、一昨日にレオにその日の予定に ついて聞かれたような気がする。その時は咄嗟に誤魔化してしまったが、思えばあの時には気付かれていたのだろう。 (レオ様は、私が無茶をしていたことに気付いて気に掛けて下さっていたんですね……)  そう思うと、それだけで胸が熱くなった。自分の感じていた不安が溶かされていくようにすら感じた。 「ごめん、あの時、もっとちゃんと話を聞いていればこんなことにはならなかったのかもしれないのに…」 「いえ!レオ様のせいではありません!これは私が勝手に無茶をしただけですから!」  慌てて否定するとっこーちゃんに、レオは小さく首を振って答える。 「ううん。それでも、僕は女の子モンスター使いとして、従魔が無茶をしないように気にかけてなきゃいけなかったんだから」 「いえ、ですが、それは私が…」  尚も言い募ろうとするするとっこーちゃんの言葉を、レオはやんわりと微笑んで遮った。その笑顔に、とっこーちゃんは思わず顔を 赤くする。 「だから、とっこーちゃんが次の特訓する時は僕も呼んでね。一緒に付き合うから」 「えっ、い、いえ、そこまでしてもらう訳には…」 「いいから。それとも、僕が一緒だったら迷惑かな?」 「い、いえ!そんなことは決して…」  とっこーちゃんは珍しく積極的なレオにしどろもどろになっているためか、自分の中の不安がいつのまにか綺麗に無くなっているこ とに気付いていなかった。  はりまおーは、その様子を部屋の外から眺めていた。何のことは無い、慌てていたレオがドアを閉め忘れただけのことだ。  レオははりまおーに背を向けているから気付いていないし、とっこーちゃんもレオの相手にいっぱいいっぱいではりまおーが覗いて いる事に気付いていない。  はりまおーはレオの態度に押されながらも、どこか嬉しそうなとっこーちゃんの様子を見て楽しそうに唇を歪めた。 「ほらね、簡単なことだったじゃない」  小声でそう呟くと、二人に気付かれないようにそっと部屋のドアを閉めた。  fin  名古屋は城で持つぎゃあっ!  ども、KINTAです。上の台詞は終わりから続けてお読み下さい。や、深い意味は無いけど。(浅い意味も無い)  いや、今日久々にSS書けたから今日書かないとダメかなって判断して無理矢理書き上げました。話の流れ的には『旅立ち』の二週 間後くらい。  で、これ、実は一度は没にした奴だったりします。随分前に八割がた書き終えて放置していた奴を拾い上げただけだったり。  没にした理由は、  1 とっこーちゃんの口調がイマイチ納得いかない。  2 はりまおーの口調が(ry  3 嫉妬の問題に抵触するのではないか?  このSSって、容易に嫉妬に関わってくる話なんですよね。自分的にはGALZOOの世界に嫉妬の話題はタブーなんで、結構悩ん だんですよ。書き始めた頃は『まぁ、これくらいなら』とか思ったんですが、とっこーちゃんの抱いている感情は裏を返せばやもりん に対する嫉妬だしなーとか考えるとどうにも…ね。  まぁ、実を言うと没にしていた最大の理由は、  4 飽きた(ぉ  だったりするんですが(コラ)。まぁ、書き上げたんで良しとしましょう。  タイトルちっとも決まらずに苦労しましたよ。SS書くときにタイトルなんて考えないし。結構いつも困ってますね。  では、良かったら感想下さい。…中身が中身なだけに。