へびさんの受難、或いは幸福?  ある日のこと。 「ちわーすっ、○ネコ便でーす」  レオの暮らしているバッチの館に宅配便が届いた。呼び鈴の音に続いて、通りのいい高い声が聞こえてくる。 「あ、はーい」  応対にでたのはバッチの留守を預かっているレオ。普段ならこの手の応対はメイドさんが全てやっているのだが、今日は珍しく出か けていたため、レオが応対に出たのだ。と言うか、外見人間と変わらないメイドさんならともかく、一目でモンスターと分かる者には 任せられないのでレオが出ざるをえなかったのだが。  宅配便を届けにきた業者は、20代に達していないだろう小柄で華奢な女性だった。見た目相応に腕も細く、そんな腕で重い荷物を 運べるのか不安になるほどだ。が、そんな見た目を裏切るように、腕が端から端まで届かないほど大きなダンボール箱を両腕で軽々と 支えている。 「お荷物お届けに参りました〜♪」  妙に高いテンションで楽しそうに言う。テンションの高さは謎だが、重い荷物を無理して頑張って持っているという様子でも無い。 「あ、どうも」  レオはこんな華奢な女性が大きなダンボール箱を軽々運んでいることに疑問を抱いたが、かさばるけど軽いものが入っているんだろ うと勝手に納得する。 「お荷物、ここに置かせてもらってよろしいですかぁ?」 「ああ、どうぞ」  だから、その言葉にレオは何も考えずにすんなり頷いた。宅配業者はレオから顔を背けてこっそりと唇を歪め、「じゃ、ここに置き ますねー」と玄関先の庭に荷物を下ろす。 「では、サインお願いしまぁす♪」  そして、顔を一部の隙も無い営業スマイルに切り変えてレオに伝票を差し出した。  レオは何の疑問も抱かず送り元を見て(へぇ、師匠からなんだ)とか思いながらサインする。 「ありがとございましたー♪」  サインを確認し、宅配業者は最後までハイテンションのままお辞儀をして去っていった。 「なんだか、妙にテンションの高い人だったなあ…」  レオは感心したように嘆息して見送りつつ、玄関先に置かれたダンボール箱を見る。 (でも、バッチ師匠が宅配便使うなんて珍しいな?いつもなら自分で持ち帰って『戦利品だーっ』って見せびらかすのに)  バッチは少しくらい大荷物になっても滅多に宅配便は使わない。多数の従魔を引き連れているから人手はあるし、自分の成果に対す る反応を直で見るのが好きだからだ。  疑問には思ったが、ここでそんなことを考えていても仕方が無い。さっさと館内に運んでしまおうとダンボール箱に手をかけて、 「…お、重いっ…」  予想に反してズシッと返って来た手ごたえに、思わず呻いてしまった。 (どうして?これあの女の子が一人で抱えていたものだよね?なんでこんなに重いの!?)  驚愕し、あんな華奢な女の子が軽々と運んでいたものに苦労することに自信喪失してしまう。これでもちょっとばかし鍛えているつ もりだったから尚更だ。  レオは外見的には優男の部類に入るが、身体能力に関して言えばそんじょそこらの腕自慢では到底適わないくらいのものを持ってい る。人間よりも遥かに身体能力の優れた女の子モンスターと一緒に訓練しているのだから、それだけでも彼の能力の高さが分かろうと 言うものだ。  なら、なぜこの荷物を運ぶのに苦労してしまうのか?理由は簡単、物理的に相当重いからである。先程の宅配業者の女の子は、実は 魔法技能レベル1のスキルをもっていて、『浮遊』の魔法でダンボールを浮かせていたのだ。わざわざ両腕で抱えていたのは、自分が 運んでいるように見せることで軽い荷物と勘違いさせて、届け先の人を困らせる趣味があるからだ。で、レオはまんまとそれに引っ掛 かってしまったのである。今頃その宅配業者はほくそえんでいるに違いない。  まあでも、レオにそのような事実が分かる筈もない訳で。 (あの子でも運べたんだから、僕にだってできる筈!)  と男の子のプライドにかけて、レオは何とか荷物を持ち上げ、館の中に入っていった。 (と、とりあえず倉庫まで持っていかないと…)  よたよたと荷物を抱えて廊下を歩く。重い、とにかく重い。既に腕がしびれてきている。と言うか、心が折れかけている。 (うう……やっぱり一人だと辛い……だ、誰かに手を貸してもらわないと無理そう……)  そんな折、レオの方に向かって歩いてくる人影が見えた。レオの様子を見て、呆れたように嘆息して声をかけてくる。 「……そなた、何をふらふらと歩いている?みっともない」  へびさんだ。いつもの傲慢とも言える態度で、呆れたように荷物を抱えたレオの姿を見つめている。 「ご、ごめん。その、荷物が重くて…」 「その程度の荷物がか?情け無い。それでも妾の主か?」 「す、すみません…」  恐縮そうに頭を下げるレオ。一応、へびさんはレオの従魔の筈なのだが、二人の関係はなぜかこんな感じである。 「…ええと、その…それで、良かったら手伝って欲しいんだけど…」 「断る。なぜ妾がそのようなことをせねばならぬ」  レオは無謀を承知でへびさんに協力をお願いしたが、案の定断られた。予想はしていたものの、その答えに凹むレオ。 「そ、そうだよね……ごめん。もうちょっと頑張ってみるよ」  それでも、何とか笑顔で返して、レオは改めて荷物をもつ手に力を入れた。その様子を、へびさんは少し顔を険しくして見つめる。 (……随分、あっさり引き下がるのだな。少しは食い下がれば、妾とて悪いようにはせぬものを……)  そんなことを考えつつ、何となく荷物を抱えてよたよた歩くレオについていくへびさん。レオの横顔を覗くと、限界が近いのか辛そ うに歪んでいた。 (ああ……その辛そうに歪められた顔……いいぞ。妾がもっと歪めてみたい……)  表面上は平素のままだが、内心では危ないことを考えている。そんなことは露知らず、レオが不思議そうにへびさんを振り返った。 一度一息ついて呼吸を整えてから話し掛ける。 「ええと……どうしてついて来るの?」 「ほう……妾の付き添いが不服と申すか?」 「そんなことはないけど……しょっと」  レオは改めて気合を入れて荷物を持ち直し、相変わらずの危なっかしい足取りでまた歩き出した。 (ふむ、まだ根を上げぬか…)  実はへびさん、自覚は無いもののレオが根を上げて再度助けを求めてきたら助けるつもりだった。だからこそ、無自覚の内にレオに ついてきたのだ。へびさんの態度がいかに偉そうでも、結局レオには弱いのである。 (……ここで、他の者と擦れ違ったらどうなるであろうな?)  ふと、そんな疑問が浮かんだ。レオは決して助けを求めまい。へびさんに断られたから別の相手に頼むと言うあてつけがましい行為 が出来る者では(しかも当のへびさんの目の前で)ないのだ。が、だ。 (相手の方から申し出た場合は、その限りではない、か……)  そう、レオからは求めずとも、向こうが申し出た場合、レオは断りはしないだろう。いや、一度は遠慮するかも知れないが、それで も相手が引き下がらなかったら素直に受けるであろう。実際に困っていることであるし、相手の好意を意固地になって拒否するような 愚か者ではない。 (…それは、少々面白くない事態であるな)  改めてレオを見る。レオはさっきよりも少し息を荒くして、それでも助けを求めずに健気に頑張っている。  へびさんはだんだん不愉快になってきた。レオの苦痛に歪んだ顔は好きだ。だが、自分が虐めた訳でも無いのにそんな顔をされるの は、どこか面白くない。 「……寄越すがいい」  短い葛藤の末、へびさんはレオに一方的にそう告げて、返事も待たずにレオの手からダンボール箱を奪い取った。 「え?」  呆気に取られて、思わず呆然とへびさんの顔を見つめてしまうレオ。へびさんはその視線にうろたえるように、少し口早に言った。 「勘違いするでない。たまには下僕にアメを与えてやるのも主人の務めだから、したまでのことだ」 「ぼ、僕も持つよ。一人で持たせちゃ悪いし」  慌てて荷物を持とうとするも、へびさんに止められてしまう。 「構わぬ。妾にとっては、大した荷ではない。そなたの力など邪魔なだけだ」 「…分かったよ。ありがとう、へびさん」  レオはへびさんの気遣いに、嬉しそうに笑顔を浮かべて礼を言った。へびさんのちょっとひねた言い方も、照れ隠しみたいで可愛か ったし。 「ふ、ふんっ、せいぜい感謝するがいい」  へびさんは顔を紅潮させて、そっぽを向いた。見えずとも、レオが苦笑を浮かべたのが気配で伝わってきて、レオにいいようにやら れているような感じがして少し不機嫌になる。いや、厳密には不機嫌とは違う。レオの笑顔や言動に戸惑ってしまうのも、それはそれ で嬉しいことではあるのだ。あるのだが……それでも、相手に手玉に取られているようでへびさんとしては素直に喜べない。そう、レ オを手玉に取るのは自分の方なのだ。 (そうよな…)  思いつくことがあった。この貸しを盾に、レオに今夜共に過ごすように命じるのはどうだろう?それならば自分が主導権を握れるし、 虐めることも愛してもらうこともできる。 (うむ、そうだ。それがいい)  決めた。今夜はレオを独占しよう。そうと決まれば話は早い。つい緩みそうになる頬を必死で堪えて、いつもの威厳に満ちた態度で レオに話し掛ける。 「そなた…妾の手伝いに、無論、感謝はしているであろうな?」 「うん、正直言うと、もう限界だったから本当に助かったよ。凄く感謝してるよ」  また笑顔。うっと思わずたじろぎそうになるも、なんとか威厳を湛えたまま続けようとする。 「そうか…そんなに嬉しいか。なら、そなたには、特別に今夜妾と共に過ごす栄誉を…「マスター!丁度いいところなのだ!」…くっ、 妾の邪魔をするとは、何事か!?」  騒々しい声に邪魔されて、声の方に振り向いて激昂するへびさん。続いて「山のサチちゃん……ま、待って……」とか細い声が聞こ えてきた。ご存知、山のサチ、海のサチの仲良しコンビである。山のサチは大きなバケツを抱えてレオの元に突進していき、その後を 海のサチが必死で追っていた。  へびさんは忌々しげな視線で二人を睨み付けた。折角のレオとの蜜時を邪魔されたのだから、怒るのも無理は無い。 「そなた等……何ゆえ、妾の邪魔をした?」 「え?……あ……う……その……」  気の弱い海のサチは、文字通り蛇に睨まれた蛙のように萎縮してしまう。が、鈍感と言うかマイペースな山のサチは、へびさんの厳 しい眼光もどこ吹く風。 「それはすまなかったのだ。でも、ボクもマスターに用があったから仕方なかったのだ」  あっさりと、聞き様によっては喧嘩売ってるようにも聞こえる言い方で答える山のサチ。当然、へびさんの逆鱗に触れるには十分だ った訳で。 「…ほぅ…それは何か?レオに用があるから、妾がいても構わぬと、そう言いたいのか?」 (うわ、へびさん無茶苦茶怒ってる!)  隣にいるレオが驚くくらい、へびさんの言葉には怒気がたっぷりと込められていた。眼は怒りで細められ、へびさんの体に纏わりつ いている蛇が怒りにあてられて萎縮して震えている。レオは軽く蛇に同情した。  海のサチはへびさんの雰囲気がより凶悪になったことで、泣き出しそうなくらいに怯えている。…が、山のサチはやはりそんな重い 空気を読めるような者ではなかった。 「う〜ん、よく分からないけど、多分そうなのだ」  山のサチの言葉に悪意は無い。山のサチはレオに用を言うのにへびさんが一緒にいても問題ないという意味で言ったのであって、へ びさんを邪魔してレオに話し掛けても構わないと言っている訳ではないのだ。が、先程喧嘩を売られたと解釈したへびさんは当然その ようには受け取らない。…意思疎通って難しい。 「……ほぉぅ?なかなか言うではないか」 「いや〜、それほどでもなのだ」  こめかみを引き攣らせて言うへびさんに、山のサチは照れたようにバケツを持ってない片手で後ろ頭を掻く。怒ってる者には挑発に しか聞こえないだろう。 「や、山のサチちゃん…その言い方は誤解を…ヒッ!」  海のサチはこれ以上へびさんを怒らせ無いように、山のサチを止めようとしたが、遅すぎた。へびさんの怒りは既に最高潮にまで達 していた。その怒気だけで、思わず悲鳴を上げてしまうほどに。  へびさんの怒りようは凄まじく、眼は危険な光を宿して爛々と輝き、蛇は正気を保ってられなくなったのかクテッと気絶してしまっ た。  それを見て本気でヤバイと感じたレオは、慌てて話に割って入った。 「へ、へびさん、落ち着いて…ね?ええと、山のサチ、悪いんだけど今ちょっと手が放せないから、話はまた後にしてもらえないかな ?」  レオにはこれが精一杯だった。今は山のサチを退散させて、へびさんの怒りは何とか自分が静めるしかない。 「む、そうなのか?でも、ボクの用はすぐに終るから、さっさとすませたいのだ」 「あーっと(チラッ)……ごめん、へびさんが先約だから」  横目でへびさんの様子を盗み見て、頭を上げるレオ。こうなったら人間椅子だろうが馬だろうが何でもして機嫌を直そうと、そんな 決意まで固めている。 「そ、そうだよ、山のサチちゃん。へびさんの邪魔しちゃ悪いから…」  そんなレオの覚悟を感じ取ったのか、海のサチが援護射撃した。 (ありがとう、海のサチ) (いえ…レオさんこそ、頑張ってください)  一度目配せ、その後首肯。レオと海のサチだけは意思疎通がバッチリだった。 「そうなのか。うー…折角マスターに喜んでもらおうと持ってきたのに、残念なのだ」  マスターと友人の二人に諌められて、さすがの山のサチも諦めたようでガッカリと肩を落とす。レオが自分を立ててくれたことで、 少しは気を取り直したへびさんが、勝ち誇った様子で凹んでいる山のサチに話しかけた。 「ふん、妾を優先するのは当然のことだ。一体何をもってきたかは知らぬが、諦めるが……ひぃっ!」  言いながら、何気ない仕種でバケツの中身を覗き込み……悲鳴を上げて後ずさる。そして、わなわな震えながら、怯えたような声で 言った。 「な、なんと言う恐ろしいものを持ってきたのだ!そなた等は!?」 「「え?」」  へびさんの言葉の意味が分からず、異口同音に首を傾げる山のサチと海のサチ。一方レオは、今のへびさんの様子に覚えがあった。 (もしかして……)  確信にも似た予感を覚えつつ、バケツの中身を覗きこむ。 「うわぁ……」  バケツの中身は、レオの予想通りのものだった。  バケツ一杯に詰められた大量のナメクジ。特別苦手でないレオが見ても思わず声を漏らしてしまうような光景だ。それを恐怖を感じ るほど大の苦手にしているへびさんが見たとあっては…恐らく、へびさんにとっては地獄のような光景であっただろう。 「……これ、どうしたの?」  まだ恐怖から立ち直って無いへびさんに代わって、レオが山のサチに訊ねる。 「これか?ボクはこれをマスターに見せに来たのだ。ボクと海のサチの二人で、頑張って集めたのだ」 「え?海のサチも」  レオが少し驚いて海のサチを見ると、海のサチは恥ずかしそうに小さく頷いた。 「あ……そう、です。その…少し、見た目は悪いですけど、とても美味しいんですよ」 「そ、そうなんだ」  海のサチの言葉に、曖昧に相槌を打つレオ。食べず嫌いはよくないかもしれないが、レオには到底食べる気にはなれない代物だ。そ れを海のサチが平気で食べられたのは少々驚きだった。 (さすが、山のサチと友達ってだけのことはあるのかな?)  そんなことを考えて一人納得する。 「それに、その…美味しいだけじゃなくて……あの……」  海のサチの話はまだ終ってないようで、続けてレオに話しかけたが、なぜか話の途中で赤くなって恥ずかしそうに押し黙ってしまう。 「ん、何?」  レオは黙ってしまった海のサチに続きを促すが、海のサチはますます真っ赤になるだけで答えない。いや、小さく口を開いて「だか ら……その……それは……」とぼそぼそと何か呟いているが、いかんせん、声が小さすぎてレオの耳まで届かない。代わりに答えたの は山のサチだった。 「これはとっても精のつく食べ物なのだ。具体的には一匹3発程度なのだ」  実に単純で生々しい回答だった。逆にレオの方が恥ずかしくなって赤くなってしまう。 「あの……もうちょっと恥じらいを……」 「うん?そうなのか?」  海のサチは耳まで真っ赤にして山のサチに注意する。まぁ、あれだ。こんなものをわざわざもってきたと言うことはつまり。 「と、言う訳で、今日はこれをもりもり食べて、一杯えっちなことするのだ」  実に明け透けに山のサチは言い、海のサチは頭から湯気が出そうなくらい真っ赤になる。レオもその言葉に真っ赤になってしまった が、レオが返事するよりも先に焦ったような声が割って入った。 「な、ならぬ!レオは今夜は妾と共に過ごす約束……ひっ、だ、だから、それを妾に近づけるでない!」  色々といっぱいいっぱいになっていたへびさんは咄嗟に声を上げてしまい、その声に山のサチが振り向いたことで例のバケツが自分 に向けられ、再び取り乱してしまう。その様子を見て山のサチは首をかしげ、それから「おおっ」と声を上げた。 「もしかして、オマエも分けて欲しいのか?」 「なぜそうなる!」  たまらず激昂するへびさんに、山のサチはどう勘違いしたらそうなるのか「仕方ないのだ。ボクは気前がいいから、特別に分けてや るのだ」と言い出してバケツからナメクジを取り出してへびさんに差し出した。 「ほら、おすそ分けなのだ」 「や、止めい!それを妾に近づけるな!」 「遠慮することはないのだ」 「ひっ……や、止め……」  震えながら、覚束ない足で山のサチから遠ざかろうとするへびさん。が、山のサチは勘違いしたままで、うぞうぞと動いているナメ クジを手にへびさんに近づいていく。 (って、見てないで止めないと!)  思わず呆然と事の成り行きを見守っていたレオが、慌てて山のサチを止めようとした。海のサチもへびさんが怯えていることに気付 き(気付かない山のサチがおかしい)、レオと一緒に止めようとする。 「山のサチ、へびさんはナメクジが苦手なんだから止めてあげて」 「大丈夫なのだ。これはそんじょそこらのナメクジとは違うから、苦手でもモーマンタイなのだ」 「そ、そうじゃなくて……怯えているから……」 「むっ、怯えるほど苦手なのか?それはますます良くないのだ。ボクが本当の美味しさを教えてやるのだ」  レオと海のサチの制止の言葉も届かず、へびさんに近づく山のサチ。そもそも、彼女はナメクジを『食べ物』としか捕らえておらず、 レオ達の言葉も『苦手な食べ物』と言う風に受け取っているため、むしろ好き嫌いをなくしてやると言う使命に燃えてしまっている。 「ふっふっふ、さあ……恐くないのだ」 「い、いやああああっ!!」  笑顔でナメクジを手ににじり寄る山のサチに、へびさんはたまらず悲鳴を上げて逃げ出そうとして足を縺れさせて転んでしまった。 その拍子に、今までずっと抱えていたダンボール箱を放り投げてしまう。  Aランクのモンスターの膂力で放り投げられたダンボール箱は、物凄い勢いでへびさんの頭上の天井に衝突した。その衝突でダンボ ール箱の蓋が開き、中に梱包されていた大小さまざまのアイテムがへびさんに降り掛かっていく。 「あ、危ないっ!」  レオは慌ててへびさんに駆け寄るが、到底間に合わずそれらはへびさんにぶつかり…  ボフゥッ 「わっ、どうしたのだ?」 「きゃ……な、何?」 「へびさんっ!」  次の瞬間、周囲は白い煙に包まれた。  続く? 後書き。 実は続かないかも<マテ ども、KINTAです。予定とは違う奴なんですが、とにかくGALZOOSSをアップしました。他にも続き物があるのに、また続 き物でごめんなさい。 いやー、でも、なんっつーか……この続き、ちっとも浮かんでなかったりしてます(ぉ 自分としてはへびさんがレオの荷物を運んであげる展開を書いた時点である程度満足してしまったと言うか、それが書きたかったんで すよ。 ただそれだけじゃあれなんで話を膨らませようと色々弄ったんですが…なぜこんなことに。 まぁ、山のサチと海のサチはいつ出そうか悩んでいたんで正直助かった部分もあるんですが。 …無謀にも、KINTAには全キャラをSSに出そう言う野望があるので。(全キャラをメインにすると言う意味ではないです) あ、作中にちらっと触れたレオの強さについて補足すると、超一流レベルの戦士には及ばないものの、並レベルの冒険者よりは遥かに 強いです。Bランクのモンスターと互角以上に戦えると言うのは、それだけの強さをもっていると言うことです。因みに、Aランク以 上のモンスターとやりあえる人間は超一流の部類に入ります。 こんな完結できるかすら怪しい中途半端なSSですが、感想頂けると嬉しいです。ではでは。